フォルテシモ最終話「繋がれたから」 



「はっはぁ! トリプル・クラウン!」 
エマはラックルを背負ったまま巨人の膝に自分の両腕と右膝を叩きつける。 
3つのオレンジの爆破が起こる。 
よろめく巨人。そのまま轟音を響かせながら倒れ伏す。 
「どうだぁ! 産声チェインソーの威力は!」 
エマはオレンジの光になって縦横無尽に駆け回る。 
足につけた深夜特急兇稜塾呂澄 
「ふぁ……」 
ラックルが欠伸と同時に飛び立つ。 
髪に隠れていた角が巨大化しヘラジカの角のようになる。 
翼も同時に巨大化。 
「イヨマンテ!」 
叫ぶとラックルは真っ赤な炎の塊に包まれた。 
「充足〜! ひゃは! ひゃはははは!」 

ドズオッ! 

一気に巨人の顎にめがけて飛び出し顎から頭にかけて貫いた。 
青い血を流す巨人。 
搭乗員も同時に殺傷したらしい。 
その巨人は無力化され轟音を轟かせて地に伏した。 
「よっしゃ! いけるぞラックル! ルナさんの手をわずらわせんな! 
 普段寝てる分働けよ!」 
「ふぁ……」 
ラックルはひゅるひゅると機動力を失い落ちてくる。 
「劣悪種族めがぁ! 調子に乗るなぁ!」 
フーコーの声がしてラックルに鉄拳が迫る。 
ラックルの目が赤く輝く。 
「月世界の火の鳥! ひゃは!」 
ラックルを包む炎が一段強まる。 
「はぁ!」 
鉄拳と激しくぶつかり合う。 
拳はジュッと音を立てて崩れた。 
「ぬうっ!」 
フーコーのうめきが聞こえる。 
ラックルは高速でジグザグに動き回りながらカラカラ笑った。 
「大丈夫そうだな……」 
ルナは腕組みして見ながら呟いた。 
しかし自分の腕がムズムズしてきた。 
最近、命のやりとりしてないんだよな…… 
できる相手がいないから…… 





なんだか昔が懐かしいや…… 
なんだか昔が…… 
「やっとるねぇ。ご婦人」 
後ろから声がした。 
振り返る。 
カンジとユアイとアリスだった。 
カンジはニコニコ笑っている。 
「世間話しに来たぜ」 
「どうやって此処が分かったの?」 
ルナは首を斜めにする。 
「これこれ」 
カンジはポケットから携帯の液晶ディスプレイを取り出す。 
「パンセって大脳特化型レッドラムが作ったレッドラム探知機。 
 魔界の門番の奴等も似たような物持ってるらしい。 
 強さも大体分かるようになってるからお前等を探すのは比較的容易だ」 
「うわ……最低……」 
ルナは感想を言う。 
カンジはカラカラ笑う。 
「おお。我が子ががんばっとるようだな。俺も加勢するか。 
 アリス。ユアイ。お前等もやるだろ?」 
「うん」 
アリスが答える。 
「まぁね〜」 
ユアイは頭の後ろで腕を組んで言った。 
「じゃ、いっせーのっ!」 
カンジの掛け声とともに3人はばらけていった。 

ドドドドドン! 

空から巨人がもう十数体降りてきた。 
カンジ達を追っていたのかもしれない。 
自分も行くべきなのかもしれない。 
瞬間、後ろから誰かに抱きつかれた。 
肩の上から侵入してきた腕が胸の上で止まった。 
「スゲエ良いじゃん。超巨乳だ。ナナミ以上かも」 
振り返らなくても分かる。 
声の主はヤマギワだ。 
まったくこの人達は…… 
これだけ年とってもまだ気配に気づかないとは…… 
「やめろよ! ヤマギワさん! その役は俺の!」 
また懐かしい声が響く。 
ネプトだ。 
ルナはヤマギワをふりほどいて振り返る。 





緑髪に天パーの白衣の男。 
自分より身長が高くなっている。 
ルナは柔和な笑みを浮かべる。 
ネプトははにかんだ。 
「ま、まままぁ! 厄介事を消してから話す事話そう!」 
ネプトはくるりと背を向ける。 
そして駆け出す。 
「オラ、ガキ共ぉ! もっと気合入れろぉ! 師匠! お久しぶりです!」 
そんな声が聞こえた。 
ルナはクスッと笑った。 
そしてヤマギワの所にたたっと駆け寄り 
そのまま正面からギュッと抱きしめた。 
ヤマギワは狼狽する。 
顔のすぐ横にルナの顔がある。 
「またあらためてお会いしたかったの」 
豊かな感触がヤマギワを刺激する。 
「貴方が母さんと私の中に見ていた物は、貴方が最初から最後まで 
 見る事の無かった人。自分の前の世代の肉親。……お母さんでしょ?」 
ヤマギワは数秒沈黙する。 
そしてフッと笑う。 
「立派な女王蜂になったじゃねえか。さすがの神も少し……少しだけ……」 
ルナは少し離れて真正面からヤマギワを見すえる。 
ヤマギワがばつが悪そうに笑う。 
「……何でもねえよ。お前の成長が何故か少し嬉しかっただけだ」 
「否定はしないの?」 
「どうでも良いからしねえよ。旅は続く。ただダラッと続くだけだ。神にとっても、な」 
いつのまにか二人の後ろに茶髪の女が立っている。たいそうな美人だ。 
「父さん。この人は」 
「ああ、ミミナ。お前の異父妹だ。ルナ。よろしくな」 
ルナはキョトンとする。 
「ヤマギワ・ミミナと言います。よろしく……」 
茶髪の女はちょこんと頭を下げる。 
ルナはパッと笑った。 
「ルナです。どうぞよろしく。異母姉さん」 
ヤマギワはニヤニヤ笑っている。 
「成長したって感じがするな。いや、元からこんなもんだったか?」 
ルナとミミナは握手した。 
「さてと。私達も参戦しようか」 
ルナが言う。 
「めんどくせーな。あいつ等あんな奴等にてこずりやがって」 
「魔剣月読が血に飢えているわ……」 
ルナが背負った大刀をズラッと抜く。 
「おぉ。それが『お前の』新刀か」 





「そう。『私の』新刀」 
ルナはニコッと笑った。 

「うおおおおおおおお! ゾエア! ミシス! メガロパ! 最終究極体! 
 甲殻戦士! ビョウドウイン・ネプトォォォォ!」 
ネプトの周りを液体金属が包む。鳥のような鋭利な仮面と 
蜥蜴のような体。背に無数の触手を背負う。 
「ステム、バーストォ!」 

ドオオオオオオオオオオオン! 

ネプトの右腕の竜宮の使いから放たれた緑の閃光が 
一気に三体のどてっ腹を射抜いた。 
ドミノ倒しのように倒れる巨人達。 
「おいおいあの兄ちゃん強すぎだろ! あれがルナさんの異母弟の……!」 
エマが感想を言った。 
楽しい! 
やっぱ楽しいよ!この世界! 
俺はルナと一緒じゃなきゃやっぱ駄目なんだ! 
お前がいないと駄目なんだ俺! 
たった一人の肉親じゃないか! 
俺は俺の生きる世界で生きるぞおおお! 
「アルテミス!」 
ネプトの眼前の巨人が縦割りになった。 
紫の閃光が残像のように残る。 
彼女ってさ。 
最高なんだ。 
最高なんだよ。 
予定調和の未来は捨てた。 
彼女とともに千変万化の世界を楽しもう。 
それで赦してよ。世界。 

月でパンセはネプトの頭の中のチップに向けて電話していた。 
意識が他の物に集中されていてまったく繋がらない。 
ザーザーとノイズ音ばかりが響いている。 
私は、負けた。 
何に? 
世界に。 
パンセの左目からつっと涙が流れ落ちた。 
悪くないね……。 
負けるのも……。 
パンセはうなだれた。 

繋がれたから、生きた。 







小説「フォルテシモ」完