フォルテシモ第七十一話「最後の戦い」 



「もう総員は配置できたか?」 
ジュペリとモアが通路を歩いている。 
「うん。20万、各所に配置したよ。もう何時来ても大丈夫」 
脇の通路からバルトーク、アマデウス、オセロ、ガロアが歩いてくる。 
「いよいよ最後だね。皆、死なないでよ」 
モアが言う。 
「十分に皆生き残れる。それ程の戦力差だ。気合でどうにかなってたまるか」 
ガロアが言った。 
「アリスは?」 
アマデウスが聞く。 
「屋上で精神統一してるよ。さすがに一番気合入ってるのはアイツらしい」 
ジュペリが言う。 
「なぁに、私達だって負けないよっ」 
モアが言う。 
「フリーダは何処に行ったのか知らね」 
バルトークが言う。 
「いいか。皆、本当に生き残るんだ。俺達何のために山を降りた。 
 強制だったけど、何かを見つけるためだった筈だ。いや、異論は認めない。 
 こんな所で死んじゃ駄目だ。未来は目の前だ」 
ジュペリが言った。 
6人は誰からともなく円陣を組む。 
「生き残るぞ! サバイバル! 生きてる事を確かめろ!」 
ジュペリが叫ぶ。 
「逝くぞ!」 
さらなる号令と共に6人は方々に走っていった。 

ドーン! 

その時、轟音が鳴り響き建物全体が揺れた。 
「始まった!」 
ジュペリが声を上げる。 

ドーン! 

胸が早鐘のようになる。 
生きてる。 
本当に。 
此処が際の際だからそう感じる。 
俺達に次は無い! 
ジュペリは外への道を急いだ。 

「幾千光年の孤独!」 

ドパウッ! 

威力を増したユアイと鵺の怪光線。 
その巨砲が白いドーム、敵基地を撃ち抜く。 





バリアが表面に張り巡らされていて決定打にはならない。 
近距離に行ってガチンコで破ってしまうしかないのかもしれない。 
だが建物は揺れている。 
ユアイは殿を守るつもりでいるようだ。 
ライマとルナ、ミナセが先陣を切ってスカイクロラの雑兵と戦っている。 
あいかわらず雑兵は手応えがなくルナは悪鬼のように超スピードで狩っている。 
「爆音時鳥!」 
ライマのブラッシュアップされた爆音夢花火の一撃が突破口を作る。 
斬り込み隊長と呼ぶに相応しい活躍だ。 
ミナセは海のような水量を操り数百体のスカイクロラを一度に相手している。 
ミナセが水でスカイクロラを追い込み塊になった所を 
カンジが炎弾「無境界の人」で一挙に焼き払う。 
中ほどをリュイシュン、キタテハ、ヨナタンのトリオが守る。 
隊はじりじりとドームに近づいていった。 
スカイクロラのサジタリウスによる攻撃も熾烈を極めその速度を落とした。 
まだ主力のオリジナル共は出ていない。 
奴等が出てきたらこちらの主力もそいつ等の相手で手一杯になるだろう。 
厳しい状態に違いない。 
勝率はかなり低いように思われた。 
でもこんな所で死ぬわけにはいかないんだ。 
生きる場所を奪われるいわれはない。 
必ず勝つんだ。どんな手を使っても。 
レッドラム連合軍の戦闘は続いている。 

ヒュン!ヒュン! 

威圧感と共に風を切る音。 
ルナの前にピンク髪のモアが突如現れた。 
ミナセの前にはアマデウス、 
ライマの前にはバルトークが現れた。 
「大将! アンタかホメロスを殺したのは!」 
バルトークが叫んだ。 
「違うと思うぜ」 
ライマが言った。 
右! 左! 下! 
レディオヘッドで攻撃を予測してアマデウスがミナセの攻撃を避けまくる。 
さすがにオリジナルの奴等は面白いな…… 
ミナセは思う。 
「はっ! たっ! やっ!」 
「んっく! んっ! んあ!」 
モアの反応速度が上昇しており鞭の動きでルナは制圧される。 
近づく事ができない。 
ルナはイライラしてきた。 
このオバサン、生意気に強くなってやがる! 
モアはモアで一瞬で勝負がつくと踏んでいてイラだっていた。 
どこまでも可愛くないガキだ! 
私の知と汗と涙の結晶で傷一つつけられない! 
先頭が停滞してカンジも苛立った。 




こんな所で止まってて勝てるものか! 
瞬間、自分のすぐ横のレッドラムが数十体紫の閃光に飲み込まれた。 
カンジは前方の空をキッと睨む。 
やはり修道服黒髪の女がこちらを見下したように見下げている。 
掌を広げて無表情を顔に貼り付けている。 
しょうがない……場所を移して戦おう。 
場所は……そうだな……天空が良い。 
カンジは一気に飛び上がる。 
「アナスタシアー!」 
カンジが叫ぶ。 
翼長約20メートルの巨大な炎の鳥が出現する。 
へぇ……変わってる……前より面白いかもね……良いわ…… 
「ついてこい能面!」 
カンジが叫んで一気に上昇する。 
アリスもそれについていった。 
「大丈夫かよ! カンジさんがどっか行っちまった!」 
ヨナタンが慌てている。 
「うろたえないでよ……雑兵は私達で何とかするしかないって初めから決まってたでしょ」 
キタテハが諫める。 
「けっ! こんな豆腐ども俺の相手には役不足アル!」 
リュイシュンが声を上げた。 

「ディエンビエンフー!」 
バルトークが声を上げる。 
クローが茶色に発光し光の爪が伸びる。 
「爆音時鳥!」 
ライマのトンファーの一撃! 
バルトークは避けた。 
「うおおおおおおおおおお!」 
バルトークの目が茶色に輝く。 
「タリホー!」 

ガガガガガガガガガガガガガ! 

獣のような光の雨のバルトークの連撃。 
ライマは防御する。 
頬をクローが掠め血がビュッと飛び出す。 
「強いな。お前」 
ライマが言った。 
「余裕だな兄貴! 次はコイツだ!」 
クローから伸びた光が一つになる。 
光の剣だ。 
「タリホー!」 
剣が一挙に伸びる。 
ライマは深夜特急の機動力で避ける。 
しかし光の剣はライマの横を通り過ぎる瞬間軌道を変えライマの腕を貫いた。 
「いって!」 
腕から血が噴き出る。 
「タリホー!」 
いつの間にかバルトークは仮面をつけている。 
「民族舞曲! 棒の踊り!」 
バルトークが残像で8人に分身したように見える。 
「くっ!」 
「タリホー!」 
8人でライマを取り囲み一斉に攻撃する。 

ドオオオオオオオオオン! 

瞬間、ライマを中心に大爆発が起こる。 





「だぐはっ!」 
バルトークは吹っ飛ばされる。 
噴煙が晴れる。 
ライマが埃まみれになって立っている。 
「野生の太陽……」 
8人をいっぺんに爆破させたようだ。 
バルトークはひょいっと起き上がる。 
「ガルルルルル! 許さねえぞ! この命尽きるまで!」 
バルトークがブレてみえる。 
「民族舞曲……帯の踊り!」 
バルトークが両手を広げるとそこに帯状の茶色の光ができた。 
それからバルトークは呪術的な奇妙な踊りを踊り始める。 
「真面目にやってんのか?」 
ライマが深夜特急で距離をつめる。 
「爆音時鳥!」 
光の帯で一撃を絡めとる。 
爆音夢花火は爆発しない。 
「なっに!」 
「オラァ!」 
激しくバルトークがライマを蹴り上げる。 
空中に吹っ飛ばされるライマ。 
血反吐を吐く。 
畜生……斬り込み隊長の俺がこんな所でちんたらやってるわけにはいかないのに! 

ドオオオオオオオウ! 

天が赤く染まる。 
アリスとカンジの戦いが始まったようだ。 
俺は……この5年間何をしていた? 
こんな無理。道理。 
俺を縛るものではない筈だ。 
さらに!前へ! 
俺は! 
空中で体勢を立て直すライマ。 
「爆音! 金剛界曼荼羅!」 
ライマの目がオレンジに光る。 
「くっ!」 
バルトークが帯で身を包む。 
そこにライマの超必殺技を叩き込む。 

ドオオオオオオオオオオオオオオウ! 

衰えを見せない爆音金剛界曼荼羅がヒットする。 
バルトークは吹っ飛ばされる。 
圧力であばらが軋む。 
「だぐはっ!」 
バルトークは吐血して彼方の地平まで吹っ飛ばされた。 
「悪いな! 最後まで相手できなくて!」 
ライマは言って、深夜特急を飛ばし先を急いだ。