フォルテシモ第三十四話「再会」 



「ほあああああああああ!」 
ユアイの頭が鵺の頭に変化して巨大化を始める。 
「何だよソレ! 最高じゃん!」 
ビュルストナーがケラケラ笑いながら鎌を振るう。 
シホの白夜行がそれを受け止める。 
「待ってやれよ。せっかちだな」 
シホは多少後ずさりながら言った。 
「知らないよ。それよりけっこう君力有るね。面白い」 
ビュルストナーはニヤつきながら言った。 
「幾千光年の孤独!」 
巨大化を完了した鵺から熱線が発せられる。 
「雑い!」 
ビュルストナーは鎌を頭上で横方向に回転させバリアーを作る。 
全てかき消される鵺の熱線。 
「ウッザいなぁ! そのデカブツ! 早く死ねよ!」 
ビュルストナーは言ってさらに激しく鎌を回転させる。 
銅色の光が煌く。 
「ルノ!」 

ヴン! 

光が空を切る。 
「やばい!」 
シホが下から氷柱を立たせるがそれはいとも簡単に斬られてしまう。 
鵺の身体が光によって激しく切り刻まれる。 
「ウオオオオオオオオオオオ!」 
鵺が悲痛な叫びをあげる。 
「やろう!」 
飛び出すシホ。 
氷蟲が氷中から飛び出る。 
「邪氷樹!」 
巨大な尖った氷の塊がビュルストナーをおそう。 
「だっから雑だって!」 
ビュルストナーが片手で鎌を縦方向に回す。 
「ルノ!」 
銅色の光がほとばしる。 
氷の塊は光に触れた瞬間瞬く間に蒸発された。 
「いっつ!」 
それと同時にシホの右腕が斬られる。 
「終わりだ!」 
ビュルストナーが飛び出す。 
「エンエンラ!」 
ユアイの質量を持った煙が発射される。 
「うわあああああああ!」 
吹っ飛ばされるビュルストナー。 
300メートルは距離が開いた。 
「はっ!」 
シホがビュルストナーが体勢を立て直す前に下から氷柱で攻撃する。 
「なっく!」 
ザクザク切り刻まれるビュルストナー。 
「いってぇぇぇぇぇぇ!」 
ビュルストナーは間髪をいれずルノで氷柱をぶった切る。 
着地するビュルストナー。 



ユアイが元の大きさに戻っている。 
キセルをかまえていてその両目がピンク色に輝く。 
「ふふん……少しは遊びがいが有るかもね……」 
ビュルストナーは呟いた。 

連続してあがるキノコ雲。 
ミナセはイザヤの発する光球を華麗な邪宗門さばきで避けまくる。 
「んーん。こりゃ案外ガス欠待ち作戦もいけるんじゃないか。俺避けるの上手すぎ」 
ミナセは呟いた。 
「畜生ちょこまかと! お前みたいな女の腐ったような男とやり合うのは久しぶりだ!」 
イザヤは言ってまた暗黒の世界を作り出した。 
「女の腐ったような奴か。前にも誰かにそれ言われた事あるな。ミズエさんだったかな」 
イザヤがピクンと反応する。 
「スワナイ・ミズエか……俺も前々から手合わせ願いたいと思ってた相手だ。 
 何処の馬の骨とも分からん奴に殺られたらしいじゃないか!本当はそいつと 
 闘いたかったんだがな!」 

ドクン! 

ミナセがイザヤを振り向く。 
「お前は俺に殺されるんだ。ミズエさんの相手になんかならねえよ」 
あれ、何言ってるんだ俺。 
また舌が勝手に…… 
イザヤが怒りでプルプル震えだした。 
「……お前は不思議な奴だ。お前の中に何人もお前が居るようだ。 
 少し分かったぞテレーゼがお前の事気に入った理由が。だが今の発言は 
 完全に俺に火をつけてしまったな。殺すぞ」 
暗黒の世界が低い音を立てながら巨大化する。 
やばいなこれは…… 
「はああああああああああ!」 
満身の力で発射する。 
「下っ!」 
ミナセは邪宗門で下の氷を溶かして海に潜る。 
暗黒の世界の通った後の氷が全て溶ける。 
「腰抜けめが!」 
イザヤは次弾をすぐにミナセが消えた海中に放つ。 
「ソォラァ!」 
光球の雨が降り注ぐ。 
海底まで潜ったミナセは邪宗門に乗って避けまくる。 
「悔しくないの? 女が腐ったような奴とか言われて」 
プラトの声が響く。 
「ちょっと待てよオカン。さっきもっと低い声の人が居ただろ。あの人誰よ」 
プラトが口ごもる。 
ミナセは攻撃を避けながら答えを待つ。 
「避けてばかりでは……勝てない……」 
そこで低い声が呟いた。 
「親父だろ? 俺、ミナセだぜ! まだ生きてるぜ!」 
ミナセがはしゃぐ。 
「集中なさい!」 
プラトが叱咤する。 
イザヤが海中に潜ってくる。 




目標を定めて暗黒の世界を発射する。 
大丈夫かよ……本当にそんなにエネルギー無駄遣いして。 
ミナセは最低限の動きでそれを避けてイザヤに向かっていく。 
イザヤはキングクリムゾンに乗る。 
「凍れ!」 
イザヤを中心に半径10メートルが凍りつく。 
墓穴を掘ったな……相手が世界最強でも……俺は勝つ! 
「喰らえ! アワワワワワワワワ! ジェロニモ!」 
ミナセの直接の原子力攻撃。 
これでどうだ……! 
瞬間、氷の中からさらに巨大な爆発が起こる。 
危険を察知したミナセは海中を高速移動して回避する。 
イザヤを中心に海水がかなりの量蒸発する。 
「お前がミズエの代わりだと言うのなら……俺とマトモに一戦してみせろ!」 
イザヤの叫び声が聞こえた。 
すまん。それは無理だ。 
ミナセは思った。 

「皆が敵幹部をおさえてくれてる……私が数を削る……!」 
ナナミはジェネシスの隊員を瞬殺しまくる。 
ナナミの中で不平をあげる声がある。 
最後のパーティーで私だけ余りかよ。 
しかし不平を行っている場合ではないのだ。 
数でこっちが不利なのだから…… 
頭上に悪寒。 
咄嗟に振り向く。 
誰かが上空から降ってきた。 
黒い学ランを着ている。茶髪で眼鏡をかけたソイツは…… 
「ナーナーミ! 俺と遊ぼうぜ!」 
ヤマギワ・シュウイチだった。 
恐ろしい記憶が呼び覚まされる。 
「くっ……!」 
ナナミは声にならない声をあげて構える。 
「落ち着けよ。楽しくないだろ?」 
ヤマギワも剣をかまえる。 
ナナミはその柄に眼がついていない事に気付く。 
「あっ。これか。これは雁だ。ハンデだな」 
ナナミの中で声があがる。 
舐めやがって……! 
「オーライ! トキノ! やっちゃってくれ!」 
ヤマギワのかけ声と共にヤマギワとナナミの周囲に氷がせり上がる。 
それは20メートルくらいせり上がった地点で止まった。 
「即席のリングだ。 トキノとフユキが邪魔者は排除してくれる」 
ヤマギワが言った。 
こいつの考える事はよく分からない…… 
ナナミはなかば呆れている。 
「さあナナミ! 俺等のラスト・ダンスで世界を変えるんだ!」 
ヤマギワがナナミに飛びかかっていった。