フォルテシモ第十一話「勝敗決す」 突然レグルスのアジトを中心に大きな爆発が起こった。 後には大きなクレーターができ噴煙がたちこめている。 「ミ……ミナセが!」 モリカワが叫ぶ。 「死んだの?」 モリカワに負ぶさったテレーゼが言う。 「アジトの中に居たんじゃアレじゃ無理だ……」 センボンギが言う。 テレーゼがかなり動揺した表情を見せる。 爆音夢花火108連撃を受けたヤマギワの両腕と両足が吹っ飛ぶ。 ドグラ・マグラと両方のエル特急が再度宙を舞う。 そしてヤマギワから約70メートル離れた場所に落ちた。 ライマが両手を膝に置いて肩で息している。 その眼がオレンジに光る。 こいつ……覚醒しやがった……! ヤマギワは思う。 両腕と両足は生えてきた。 しかしエル特急無しでは深夜特急の機動力に太刀打ちできない。 「へへ……へ……やるな負け犬」 ヤマギワは言った。 ライマの眼は動かない。 じっとヤマギワを見下ろしている。 「フウガ……」 ライマは呟く。 そして両腕に力を込める。 「ちょっと待ったー!」 ヤマギワが声を上げる。 ライマの動きがピタリと止まる。 「じゃーん! これなーんだ!」 ヤマギワはポケットから白い掌サイズの正二十面体を取り出した。 「答えは魔界の門番の超科学の道具『少女地獄』! スゲエだろ!」 ライマは無表情を保つ。 「この中には……小型化された迷宮がある。で、其処にナナミが居る」 ヤマギワは言った。 ライマの表情がピクリと動く。 「これを力を入れてパリンと割れば中に居るナナミを潰れて死ぬ。パスワードを唱えれば ナナミは外に出てくるがそれは俺しか知らない」 ヤマギワはニタニタ笑い出す。 「それ以上近付けば潰すぜ? 俺が体制を整えるまで待ってもらおうか」 ライマは舌打ちする。 そして再度両腕に力を込めた。 それを見てヤマギワは身を固めるがその次の瞬間ヤマギワの下の大地が一気にせり上がる。 ライマは一瞬狼狽して飛び立つがせり上がる大地の頂点には届かなかった。 ライマが再度舌打ちする。 大地の頂点の土に中からトキノが出現する。 「ふーっ! 危なかった! 死ぬとこだったぜトキノ!」 ヤマギワがため息をつく。 「ダセエなリーダー。ほらよ。道具」 何時の間にかトキノが持ってきていたエル特急とドグラ・マグラをヤマギワに手渡す。 瞬間、トキノの頭上を赤い熱線が掠める。 「ちいっ!」 眼下からインカニャンバに乗ったイヨが舌打ちする。 「相手が退屈すぎる奴でよ。お前の世話焼く暇があったぜ」 トキノが言った。 「俺は運が良いのもとりえだからな」 ヤマギワが言った。 眼下からライマが眼をオレンジに光らせながら睨みつけている。 「狂骨の……夢!」 ナナの最速の一つの太刀。 フユキの雁がついに折れる。 「ちいっ!」 フユキが舌打ちする。 「何が勝てないだ! 口だけ野郎! とどめだ!」 ナナの再度の一つの太刀。 だが瞬間ハヤミ・ショウが割ってはいる。 「水晶の夜!」 ナナの斬撃を受け止めた水晶の夜はナナの方にカマイタチのような斬撃を送り返した。 右肩から左腰に向けて斬りつけられるナナ。 「ああっ!」 悲鳴をあげて倒れ伏す。 「チェックメイトよ。お嬢ちゃん」 ショウが言う。 ナナは血を流しながら喘いでいる。 「あばよだな。口だけ虫けら!」 フユキが吐き捨てた。 その次の瞬間、ショウの頭が弾け飛んだ。 血を浴びて狼狽するフユキ。 狙撃された……! 慌てて辺りを見回す。 ナナは見た。 1キロ程先でヤナギモト・フルが人二人分ほどの大きさの 真っ青は特大のタンクのような銃を持っている。 「遅くなった……大量虐殺用新テレポン……『ビッチェズ・ブリュー』」 フルが低く呟く。 銃から数百発の光る球体が飛び出す。 それは直ぐに散らばり一路レグルスの隊員達の頭を目指す。 「うわあああああああああ!」 フユキは叫んで死んだショウの水晶の夜を頭の前に持っていく。 しかし他の隊員が次々に狙撃され倒されていく。 球体はレグルスの隊員の頭だけをピンポイントで狙っている。 復活したアユムはなす術もなく頭を撃ちぬかれた。 ヤマギワとトキノは人間の土地で土地を隆起させ防いだ。 しかし気付くと自分達の周りの隊員が全員殺されてしまっていた。 百数十人の死者の屍が累々と積み重なる。 「間に合ったね! ナナミさんに酷い事した奴等! これくらいしてやらないと!」 モリカワの上でテレーゼが言った。 残ったのはフユキとトキノとヤマギワだけ。 「何てこった……」 トキノが呟く。 下でライマが眼を光らせながらトキノとヤマギワを見上げている。 「もう負け確定だ……どうやって逃げる?」 ヤマギワがポケットから少女地獄を取り出す。 「俺に不可能は無い……!」 ヤマギワが眼下を睨みつけた。