フォルテシモ第十話「攻防」



クロヌマ・フユキのテレポン「雁」は瞬間的にその全長を伸ばすことができる日本刀だ。
フユキは青いメッシュを入れた髪を立たせて学ランを着ている。
しかし能力が付加されればその分キャパシティは消費される。
一回折ってやれば私の勝ちだ……!
ナナは思った。
スピードはナナの方が上だがパワーではフユキが勝っていた。
両肩がズキズキと痛む。
「よう。言っとくけど俺達単純な戦闘は嫌いだからな」
フユキが言った。
「どういう意味だ!」
ナナが言う。
「お前等は勝てねえって言ってんだ」
フユキは吐き捨てた。

フウガはライマに肩車させた。
「不恰好だな! 負け犬!」
ヤマギワが言った。
フウガがナイフ14本を掃射する。
ヤマギワが足につけたローラーブレード型の「エル特急」で避ける。
「速い……」
フウガが呟きながらさらに20本ナイフを投げる。
ライマが同時に深夜特急で距離をつめる。
「ドグラ・マグラ……!」
ヤマギワが刀をライマに向ける。
ライマは瞬間眼を閉じエル特急の排気音を頼りにヤマギワに近付く。
「爆音万華鏡!」
ライマがヤマギワに向けて爆破を起こす。
ヤマギワはエル特急で一瞬で横にスライドして避ける。
ライマもすぐに深夜特急で追いかける。
3秒で数キロの距離を追いかけっこする。
速度には大差ないようだ。
「爆音山荒!」
爆音万華鏡とナイフ30本の複合攻撃。
爆風を避けたライマの肩口にナイフが3本突き刺さる。
「うっく!」
体勢を崩したヤマギワが盛大に転倒する。
「爆音狂詩曲!」
ライマの爆音夢花火36連撃で追い撃ちをかける。
ヤマギワはすぐ体勢を立て直しエル特急で避けまくるが
2発命中し両腕が吹っ飛ぶ。
ドグラ・マグラが宙に舞う。
「とどめだ!」
ライマが叫ぶ。
「ドグラ・マグラ!」
ヤマギワが叫ぶ。
ちょうどライマの方を向いたドグラ・マグラの眼が瞬間ライマの両足を捉える。
ライマの両足の動きが鈍り転倒する。
「何……! 眼以外でも効果が……!」
その次の瞬間ヤマギワがフウガの頭の上半分を両断した。
ライマは一瞬驚いた顔をした。
無心で爆音夢花火を振るい爆発を起こす。
ヤマギワは一瞬で距離をおいてしまう。
ライマは息を荒げながら現実を確認する。
レッドラムは脳を破壊されれば自己修復することが出来ない。
ライマが笑い出す。
フウガは殺された。
「あああああああああああああああ!」
ライマがはちきれんばかりの大声で吼えた。
ヤマギワはニタニタ笑っている。
油断したその瞬間、ライマがヤマギワの目の前に居た。
「へ?」
阿修羅の形相のライマが目に映る。
「爆音金剛界曼荼羅!」
ライマの爆音夢花火108連撃が火を噴いた。

バランと融合したアユムは掌から青い熱線を発する。
ミナセは防御用のとっておきの技「悲の器」で水の皿を作ってそれを防ぐ。
併走している間にだんだんアジトに近付いてきた。
「こうしてる間にもナナミさんはどんな屈辱を受けている事か……。
 ああ俺も混ざりたい!」
「下衆野郎! 敵じゃなくてもお前は殺してやる!」
バランの口からアユムの声が響く。
ミナセの欲望のボルテージが上がっていく。
「うーん! うん! うん! 今なら出せるかもな! 邪宗門の最強の技!」
ミナセが叫ぶ。
頭の上をアユムの熱線が掠める。
「ふざけるのもたいがいにしろ!」
アユムが叫ぶ。
ミナセが急に無表情になる。
アユムが背筋に寒気を覚える。
「奥義……死にぞこないの……青!」
ミナセが叫ぶ。
大気がギュンと音を立て邪宗門の切っ先に集中する。
横に構えたその先端から数十メートルの水の刀ができる。
「なっ!」
アユムが叫んだ時には既に「死にぞこないの青」が腹に食い込んでいた。
その次の瞬間ミナセはアユムを一刀両断した。
「あばよケダモノ! 俺は姫様を助けに行く!」
ミナセが言った。
アジトについてすぐに中に入る。
中はもぬけの空だ。地下室への階段はすぐに見つかった。
急いで下に降りる。
地下牢があった。
一番奥の部屋に向かう。
男物のワイシャツ一枚のナナミが居た。
ミナセは鼻血を噴き出した。
ナナミは気を失っているようだ。
「うくっ……ナナミ……すぐ助けるから……!」
ミナセは邪宗門で刀を作る。
一閃。
格子は四角く切り取られた。
ミナセはナナミに近寄る。
「ナナミ! 起きろ!」
ミナセがナナミを抱き寄せ叫ぶ。
その瞬間ナナミの眼が大きく見開かれる。
「ナナミ……」
ナナミは一気にミナセに抱きつく。
「うお! ナナミ! 俺鼻血止まんなくなっちゃう!」
ミナセは言ったが異変に気付く。
ナナミの体温が異常に低い。
「テレポン『人まがい』」
ナナミが呟く。
「え……」
ミナセが狼狽した次の瞬間、ナナミの形をしたテレポンは
半径100メートルを一気に消し去る爆発を起こした。